さて、アサーションの研修をしていると、100発100中と言っていいほどいただく質問があります。
それは「いくらこちらがアサーティブになろうとしても、相手がパッシブ(受け身的)だったり、アグレッシブ(攻撃的)だったりしたらアサーティブな会話は成り立たないのではないでしょうか?」というもの。
「自分はアサーティブでありたいけれど、相手がそれに応じてくれなそう…」という心配ですね。
確かに、いくら自分が誠実に伝えようとしても、「どうせ反論されるだけ」とか、「どうせ黙り込まれるだけ」と思ったら、伝える勇気もしぼみそうになります。
特ににこれまで「アグレッシブ‐パッシブ」な関係を長く続けてきてしまうと、もう相手の反応が目に見えるようで、「アサーティブに言おうとしても無駄だ」と思えてしまうこともあります。
でも、諦めるのはちょっと待って!
こんな気持ちになっているとき、皆さんは1回のコミュニケーションにあまりに多大な期待をかけてはいませんか?
アサーションは魔法ではありませんので、いくら自分がアサーティブな態度をとったとしても、相手がすぐに同じくアサーティブな態度を示してくれるとは限りません。
ですが、これまでとの違いは相手も感じるはずです。
- おや、いつも自分の意見ばかり押してくる上司が、今日はなんだかこちらの意見も聞こうとしてくるぞ?
- おや、いつも黙ってばかりの部下が、今日はきちんと自分の意見を述べてくるぞ?
…などなど、対話の中でのあなたの変化は相手も気づくはずです。
相手をいきなり急に変えることはできなくても、あなた自身の変化は少なくとも起こせるはずですよね。
もちろんだからと言って、長らくパッシブだった部下がすぐに安心して意見を言ってくれたり、長らくアグレッシブだった上司が急にこちらの意見を聞いてくれるようになるとは限りません。
それこそ、「どうせ聞く耳を持つふりをして、なにかご機嫌を損ねるようなことを言ったら途端に怒り出すに違いない」とか、「どうせ少しでも私が反対すると、すぐに意見を引っ込めてしまう気だろう」などと相手が警戒するのは当然のことです。
しかしそこから粘り強く、あなたがアサーティブな態度を取り続けていけたら、だんだんと相手もあなたのアサーティブな態度を「信頼してもよいかな」という気持ちになっていきます。
そうして初めて「だったら私もそれに応じてみようかな」という気持ちになれるのです。
いわば「アサーティブな対話にお誘いする」んですね。
「断られるかもしれないお誘い」をかけるのは勇気がいるものです。
でも、勇気を出して誘ってくれたり、「応じてくれたら嬉しい」という気持ちをもって誘ってもらえたら、それだけで気持ちは動かされるものですよね。
少し気長に、相手に自分の姿勢の変化を信じてもらえるまで、アサーティブなお誘いを続けてみませんか?