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ホームアイシンクインフォメーション第4回:外注先管理で重要な「品質オーディット」

第4回:外注先管理で重要な「品質オーディット」

どうするプロマネ? 2024.06.26

●はじめに
米国のサーバーメーカーA社では、ベンダーB社をハードウェアの新規調達先として選定しました。そして、調達開始。
まもなく、B社ハードウェアを組込んだA社製品で、致命的な市場不良が発生。リコールを伴う巨額の損失が発生する事態となりました。
なぜ今頃、こんな初歩的な品質問題が市場で発生したのか? 外注先の品質を担保する上で、B社との契約前に実施すべき作業に抜けがあったのではないか?
B社に対する「品質オーディット(品質監査)」を徹底していれば、避けられたのでは、、、
今回は、その事前策について考えてみましょう。

 

米国のサーバーメーカーA社では、多くの法人顧客にサーバーソリューションを提供しており、法人顧客ならではの高品質が求められていました。
ここで高品質とは「信頼性」「機能性」「使用性」「効率性」「保守性」等の高さであり、とりわけ「信頼性(壊れにくさ)」は非常に高く要求されていました。

一方、A社では、ハードウェアは全て外部ベンダーから調達しており、基幹ハードウェアをベンダーB社から調達する事になりました。
ベンダーB社は業界での評判が良かったため、「製造品質は、自社(A社)が細かく確認しなくても問題ないだろう」と、A社では判断していました。

A社では、コストダウン狙いで「B社ハードウェアの品質検証工数をできるだけ少なく」して、B社ハードウェアを調達し、組込み、出荷開始しました。
やがて、市場で様々な品質問題が発生しましたが、そのほとんどは、B社ハードウェアの製品品質不良に起因するものでした。

A社では出荷停止を余儀なくされ、B社と共同でRCA(Root Cause Analysis根本原因解析)に着手しました。
その結果、A社が今回のサーバーソリューションの開発段階でB社から調達した「評価用サンプル」は、B社が意図的に選別した「良品サンプル」であり、量産バラツキを判断できないサンプルだったことがわかりました。

A社は「オンサイト品質オーディット(現場での品質監査)」を実施し、B社の製造ライン現場で「バラツキを含めて量産品質を担保できるか」確認をする事になりました。
現場では、期待に反して品質管理上の問題点が数多く見つかり、B社に、多くの量産品質改善策を現場で実行させました。

数カ月後に出荷再開となりましたが、出荷停止していたため売上目標は未達。
さらに、リコールを伴う巨額の損失が発生しました。

この件を教訓に、A社では「ベンダー現場の品質管理を『事前』確認する手順書の『強化』と『徹底』」が重要テーマになり、「オンサイト品質オーディット(現場での品質監査)」のチェックリストが作成されました。
そして、ハードウェアの新規調達時は、「調達契約前」にこのチェックリストで確認する事がルール化されました。

例えば、

「ベンダー内に品質管理システムはあるか?」
「品質管理ポリシー・目標・責任は明文化されているか?」
「それらは、品質管理部門以外を含めて、社内で共有されているか?」
「品質目標を設定しているか?」
「ビジネス判断はその品質目標に基づいているか?」
「直接・最終顧客名、顧客の期待値は社内で共有されているか?」
「品質管理ポリシー・目標は定期的に見直され、最新版は迅速に社内共有されるか?」
「継続的品質改善が実施され、マネジメント層はそれに直接関与しているか?」
「品質トレーニングプログラムはあるか?」
「品質トレーニングプログラムはしかるべき責任者、委員会によって制度として整備されているか?」
「品質トレーニング受講済者リストはあるか?」
「品質トレーニング受講済者のみ実行できる業務を非受講者が実行する可能性はないか?」
「ベンダー内の品質目標値は顧客要求に対しどれだけのマージンを見込んでいるか?そのマージンは適正か?」
「品質不良の発生防止に対し、マネジメント層はどのように取り組んでいるか?」
「文書化のシステムはあるか?」
「製品・プロセス文書はコントロールされているか?」
「暫定スペック、最終スペックが文書上に明確に区別され、社内で必要な部門・メンバーと共有されているか?」
「文書毎に、社内で必要な部門名・メンバー名が明確になっており、随時更新されているか?」
「顧客仕様の変更時は、変更のリクエスト、承認、実施がしかるべき責任者によって承認され、文書化され、その文書をいつでも見られ、トラッキングもできるようになっているか?」…

B社の製造ライン現場ではこのチェックリストに従って、「オンサイト品質オーディット」の運用を開始しました。
品質管理上の問題が見つかれば改善策を現場で即、実行するシステムが確立され、その後、市場不良率は激減。
A社では、法人顧客の期待通りの品質を担保する事ができるようになり、ビジネスが急速に安定してきました。

外注先のマネジメントには、多角的な視点が必要です。
PMBOKの品質(Q)視点でマネジメントする上で、「オンサイト品質オーディット」が必要なケースも多々あります。

ベンダーの品質管理能力を正しく評価し、ベンダー品質リスクを削減する事は、多くの現場での切実な課題です。
そして、ベンダーに自社要求通りの品質を実現させる上で、「現場の業務標準や手順書類が整備され、徹底されるシステム」は極めて重要です。

今回の事例では、サーバーメーカー⇔新規ハードウェア調達先との間での品質マネジメントをご紹介しました。
皆様の業種業態では、今回の事例とはベンダーの位置付けが異なるかもしれませんが、品質マネジメントを徹底する上で活用できる視点はあるのではないでしょうか?

■サマリー
外注先を適切にマネジメントする上で必要な「ベンダー側の品質管理能力」の強化。
そのための重要な手立てとしての「オンサイト品質オーディット(現場での品質監査)」
その留意点を理解しておくことで、外注先の品質管理の成功率を向上させることができます。

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