さて、これから暑くなってくると、職場で気になるのが「におい」の問題です。
ツーンときたり、ムワッときたり…。
これは本人に伝えるのが非常に難しく感じられるテーマです。
本人に悪気があるわけではないですし、対処のしようがないことを求めているような気もします。
なにより、ひどく傷つけてしまいそうで恐ろしい。
ただ一方で、においは受け手側には距離を取る以外に防ぎようがなく、生理的な不快感を我慢し続けるのも、非常に辛いものです。その人自身が嫌なわけではないのに、嫌な気分にならざるを得ないのも残念です。このようにとても強い葛藤を起こすテーマですが、だからと言って「察してわかってもらおう」とすると、どうしても嫌味なやり方になってしまいます。
- 相手が近づくと顔をしかめる
- 相手が風下になるようにデスク扇風機を向ける
- 制汗剤を目立つところに置く
この遠回しなメッセージの真意に気づいたとき、相手は面と向かって言われたときより、いっそうショックを受けるでしょう。
そこで、大変言いにくいことではありますが、やはりこのようなテーマも「率直に話す」ことにトライしてみましょう。
ポイントは以下の3つです。
1.いつ、においが気になるのかを絞って伝える
多くの場合、四六時中、においの問題が起きているわけではないですよね?
外出から帰ってきた夕方とか、化繊の服を着ているときだとか、実はよく考えると、状況はかなり限定できるはずです。
そして、この状況を絞り込むことが、具体的な「対処」の指針にもなるわけです。
- 外出から帰ってきたときに、シャツが汗だくなら替えてほしい
- 化繊の服は、夏場は避けてほしい
など、これならとても具体的ですね。
単に「あなたは体臭がにおうからなんとかしてくれ」だと、言われたほうもどうしていいかわからなくて、職場に来てはいけないようにさえ感じてしまいますが、これなら対応可能です。
2.相手のショックを受け止める
においの問題を伝えられたとき、たとえどのように伝えられたとしてもショックなことに違いありません。
「えっ、私、におってましたか?!」「そんなにひどいですか!?」など、相手のショックが表現されたとき、私たちは「ドキーッ!」と焦ってしまいます。
それで、「そんなことないよ」と思わず否定してしまったり(どっちやねん、ですね)、「私はいいんだけど、もしかすると他の人がね…」(うそっ、みんな思ってたの?!)など、余計相手を追い詰めるようなことを言ってしまいがちです。
相手が受け止めるのにエネルギーがいることを伝えたのですから、伝えた側の責任として、相手が感じたショックや、動揺をまっすぐ受け止めましょう。
「うん、驚かせてしまって申し訳ないけど…、私は気になってたんだ」
「はい、ショックかと思いますが…。私はお伝えしたい、と思いました」
このようにあなたが言ったことをすぐ打ち消したり、変に言い逃れようとすることなく、しっかりと受け止めることで、相手もフッと気持ちが落ち着くものです。
3.長引かせない
伝えることを伝え、相手の気持ちも受け止めたら、長居は無用です。
どちらにしても居心地が悪い時間であるには変わりないのですから、変に長引かせることなく、話し合いを終えましょう。
「ごめんねごめんね、傷ついた?」とか、「あんまり気にしないでね」など、相手のご機嫌をうかがったり、取り繕うようなやりとりは不要です。
それはあなたの罪悪感を軽くしたいための振る舞いに過ぎません。
「話を聞いてくれてありがとう。仕事に戻りましょう」と、スマートに場面を切りかえてください。
以上、3ポイントでしたが、どうでしょうか。これで不安なく伝えられそうですか?
「う~ん、でもやっぱり不安…」という方。実は、それが普通です。伝える上での不安がゼロになることはありません。むしろ、不安が「ゼロ」のほうが怖いのです。
不安がゼロということは、「私は被害者だ。これを言うのは正しい!」と思いなしているということです。
これでは相手とアサーティブな対話にはなりそうもありません。
「相手への気遣い」を持つ以上、どこまでも不安は付きまといます。むしろその不安な気持ちを「相手に対する気遣いの証」として大事にしながら、話し合いに臨んでみてくださいね。